ニューロンネットワーク株式会社

代表取締役社長

石田 行司

他業種とのコラボレーションで、
医療と介護を日本が誇る新たな産業に

命と健康は誰にとっても大切なものであるはずなのに、少子高齢化の進む日本では社会保障費の圧縮を図る政策が進められており、国民の負担は増す一方。医療や介護だけでは解決しきれないところまできていると感じています。すべての人々が幸せに暮らしていくために、さまざまな業種の知見や技術を取り入れ、積極的にコラボレーションしていくことで、医療と介護を日本が誇る新たな産業にしていきたいと思っています。

組織名
ニューロンネットワーク株式会社
Name
NEURON NETWORK Co.,Ltd
出身地
大阪府
生まれ年
1965年
所在地
大阪府摂津市千里丘1-4-9
創業年
2002年
業種
調剤福祉事業、コラボレート事業
URL
https://www.neuron-net.com/

体の各器官をつないで情報を伝える神経細胞「ニューロン」のように、病院、薬局、介護施設、行政、企業など、さまざまな業種をつなげて、患者さんやその家族の皆さんにとってベストな環境を作っていきたい。当社の社名にはそんな思いが込められています。起業のきっかけとなったのは、娘が1歳を過ぎた頃にインフルエンザ脳症を患い、脳炎を起こして重度の障害を負ったこと。どこの病院なら娘に適したリハビリが受けられるのか、障がい者手帳はどうやって申請すればいいのか、行政の支援を受けるには…など、何をどうしたらいいのかがまったくわからなかった。私が死んだ後に娘が「良い人生だった」と思えるような環境や医療・介護のサポートを受けられる体制がまったくないと感じました。娘だけではありません。誰でも予期せぬ事故で体が不自由になってしまう可能性はあります。年を取って認知症を発症することもある。でも、誰かが作ってくれるのを待っていても、何も起こりません。それならば自分で、誰もが安心して幸せに暮らせる街を作っていこうと考えたのです。そこで、製薬会社のMRとして長年勤務した経験を生かし、病気の予防から、未病、治療、再発抑制、介護保険の申請などさまざまな情報をワンストップで提供する『健康よろず相談所』となることを目指して、2002年に調剤薬局を開業しました。

例えば皮膚疾患が気になるという相談を受けたら、その状態を確認し、もし帯状疱疹の疑いがあれば、神経内科も皮膚科も診てくれる病院の紹介状を書いて患者に渡します。そして医師にはその患者の基礎疾患や投薬歴などを報告し、双方を連携します。こうした対応がスムーズにできるよう、各医療機関とのネットワークを徐々に築いていきました。現在、国が推進している健康サポート薬局の取り組みと同様のことを、当社では17年前から行っているのです。しかし、本来あるべき薬物治療のプロフェッショナルとしてその本業を突き詰めたからこそ、薬だけで治すことの限界も感じていました。もっと川上の、予防のところから薬剤師が関わることができたらと考え、他業種とコラボレーションし、調剤薬局としての目線が考慮された製品・サービスの開発事業に取り組みました。大手寝具メーカーと疲労医学を専門とする研究者とともに肩こりや頭痛を軽減する枕を作ったり、大手スポーツメーカーとともに足のむくみを軽減するサポーターを作ったりしたのはその一例です。また、さまざまな企業や自治体と協働し、健康・医療のまちづくりにも取り組んでいます。生活習慣病のコントロールをすると認知症の発症率が低下する海外の研究データもあります。健康を維持するためにも、医療・食事・住居・運動・睡眠の5要素を整える仕組みを作り、皆が元気で長生きできる社会にしていきたい。医療と介護は他業種と組み合わせることで、魅力ある新たな産業にすることができると考えています。

海外に行くとすでに医療は産業だという国もあります。例えばオランダのある老人ホームは、1階が小さなスーパー、2階が住居になっていて、55歳以上になったら誰でも住むことができる。認知症でも、末期がんであってもです。毎日の買い物ついでにおじいちゃんおばあちゃんの顔を見に行くことができる。今の日本にはない発想です。私はこのモデルにホースセラピーを加えて、自然と馬と人が共生する施設を国内に作りたいと思っています。そこには健康を意識した食を提供するレストランも作ります。万人受けを目指すのではなく、今よりも選択肢を増やしたい。そうして形あるものを作っていく中で、幸せをみんなで追求していこうという理念を伝えたいと思っています。しかし、理念と利益は両輪で、理念を実現するためにもコアとなる収益産業が必要となる。それが関西国際空港対岸のりんくうタウン国際医療特区にある「IGTクリニック」です。がん細胞につながる血管の流れを止めることで細胞を壊死させる「動脈塞栓術」という特殊な治療を行うがんセンターで、この医療システムをアジアを中心とした世界に輸出するほか、海外からの患者の受け入れや医師の研修も行っています。

少子高齢化していく中で、今以上に日本の産業が活性化することはなかなかないでしょう。しかし、日本の医療や介護が他業種と結びつくことで、魅力ある新たな産業を作り出すことができます。それをグローバルに展開していくための礎を作るということが、今後の私のビジョンです。実現していく上で一番大切なのは「世界中の人々に最適な医療を福祉を提供していこう」「世界中の人々から感謝される仕事を作っていこう」「多くの人を幸せにしていこう」と共感してくれる「仲間づくり」だと思っています。人は自分と同じ価値観を持つ人を素晴らしいと思いがちですが、組織はそうではありません。思いの部分が一つであるなら、異なるタイプの人や企業がたくさん集まった方が、よりおもしろく、多様な展開ができるのです。その力がこれからの医療や介護の世界をもっと魅力的に変えていくと信じています。

ニューロンネットワーク株式会社

代表取締役社長

石田 行司

授賞式・インタビューの様子

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